バイオケミカル事業を行っている「協和発酵キリン株式会社」

「協和発酵キリン株式会社」をご存知でしょうか?

キリンホールディングの子会社で、キリンビールグループに属している「医療用医薬品事業・バイオケミカル事業等」を行っている総合バイオメーカーです。

バイオ産業は、生物学での研究を基盤として、実業に結び付け行なわれるバイオ産業ですが、具体的には、発酵、組織培養、細胞融合、遺伝子組換え等の技術を応用した産業が含まれています。

そして、協和発酵キリンは4つのカテゴリーを中核にして、研究開発から製造・販売まで一貫した連携を行っています。・がん領域・腎領域(高血圧と糖尿病を含む)・免疫・アレルギー領域・中枢神経領域の4つのカテゴリーです。

そして、最先端の治療薬として「抗体医薬品」があります。「抗体医薬品」とはなんでしょうか?生体がもつ免疫システムの「抗体」を主成分としているのが抗体医薬品といいます。そして、抗体医薬品は、一つの抗体(※1)が一つの標的である抗原(※2)だけを認識する。という特異性を利用しています。 そして、この抗体医薬品の大きな特徴は、副作用が少なく、そして効果がある。といったところがとても注目されています。ゲノム解析によって、創薬のターゲットとなる抗原分子が特定されていくことで、抗体医薬の可能性が拡大していくといわれています。

そして、従来の医薬薬と抗体医薬品の大きな違いは「特異性」があげられます。従来の医薬品は、ある標的を狙って薬を作りますが、標的以外にも薬が作用することがしばしばあります。そしてその問題点は、時としては思わぬ副作用がでてしまう。ということです。

抗体医薬品は、標的を狙って作ると、標的以外に副作用として、他に作用することがほとんどないといわれているため、想定外の副作用がでることがあまりないという点が大きく従来の医薬品とは違う点です。

※1 抗体:抗体とは、異物から体を守るために働くタンパク質の一種であり、異物が体内に侵入すると、それらを攻撃、排除するために体内で産生されます。抗体は免疫という生体防御システムの一翼を担う大切なものです。

※2 抗原:抗原とは、異物の表面に存在しており、抗体が異物を認識して破壊するための標的となるものです。自己免疫疾患という病気では、自分の体を構成しているものが抗原となって免疫反応が起きてしまいます。また、特にアレルギー反応を引き起こす抗原を特にアレルゲンと呼びます

抗体はどのようなかたちをしているのでしょうか?

一般的に、Y字の形表現されます。Y字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2つのポリペプチド鎖が2本ずつ)を基本構造としています。それぞれ2本のH鎖(重鎖:分子量の重い方)とL鎖(軽鎖:分子量の軽い方)によって構成されています。

また、抗体には定常部と可変部があります、抗原の違いにより様々な構造に変化する部位を可変(Y時の上部分で二つに分かれている部分)、ほぼ一定の構造を有する部位(Y字の下の部分で1本の所)を定常部と呼んでいます。

可変部は、様々な抗原に対応できるように、抗体の多様性を形成します。H鎖の定常部は、構造の違いにより5つの種類(アイソタイプ※3)に分類されます。

※3 アイソタイプ:抗体は短い(分子量の軽い)L鎖と、長い(分子量の重い)H鎖によって形成されています。そのうちH鎖には異なる5種が存在し、このH鎖の違いによって抗体の種類が変わります。この抗体の種類を亜型(アイソタイプ)と言います。

抗体の特異性とはどのようなことでしょうか?

抗体は可変部(Y時の上部分で二つに分かれている部分)で、特定の抗原と結合します。これをその抗原に対する抗体の「特異性」といいます。抗体の可変部は左右1対ずつあります。そしてそのいずれも、同じ抗原と結合します。そして、体の中では、さまざまな可変部を有する抗体が産生されていきます。

抗体のH鎖定常部は5種類あります

どの種類のH鎖定常部を持っているかによって、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類(アイソタイプ)に分類されて、生体内の分布や機能が異なってきます。

IgG

免疫グロブリンG(IgG)はヒト免疫グロブリンの70-75%を占めます。血中に最も多い抗体です。軽鎖2本と重鎖2本の4本鎖構造をもっています。IgG1、IgG2、IgG4は分子量は約146,000であるが、IgG3はFab領域とFc領域をつなぐヒンジ部が長く、分子量も170,000と大きい。IgG1はIgGの65%程度、IgG2は25%程度、IgG3は7%程度、IgG4は3%程度を占める。血管内外に平均して分布します。

そして、唯一胎盤を通過できるアイソタイプでもあります。母親から以降したIgGは生後1週間まで生まれたばかりの新生児を守ってくれます。そして、血中や組織内に広く分布して生体防御を担っています。

IgM

免疫グロブリンM(IgM)はヒト免疫グロブリンの約10%を占めます。基本の4本鎖構造が5つ結合した構造をもっています。分子量は970,000。通常血中のみに存在しています。感染微生物に対して最初に産生され、初期免疫を司る免疫グロブリンです。生体防御(免疫)の初期をつかさどっています。そして、血中に分布しています。

IgA

免疫グロブリンA(IgA)はヒト免疫グロブリンの10-15%を占めます。分子量は160,000。分泌型IgAは2つのIgAが結合した構造を持っています。IgA1は血清、鼻汁、唾液、母乳中に存在しています。その母乳は新生児の消化管を細菌・ウイルス感染から守ります(母子免疫)。腸液にはIgA2が多く存在しています。

IgD

免疫グロブリンD(IgD)はヒト免疫グロブリンの1%以下です。B細胞表面に存在し、抗体産生の誘導に関与する。

IgE

免疫グロブリンE(IgE)はヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在していません。寄生虫に対する免疫反応に関与していると考えられていますが、寄生虫の稀な先進国においては、特に気管支喘息やアレルギーに大きく関与していると考えられていますが、最近では、花粉症などのアレルギーに重要であることが知られています。

抗体は抗原に結合してどのような働きをするのでしょうか。

中和作用

細菌やウイルスなどの微生物や、ヘビや虫などの毒素は、自らの構造の一部を細胞表面に結合させて細胞内に侵入し、毒性を示します。細胞に侵入する際に結合させる部分に抗体が結合してしまえば、微生物や毒素は細胞に結合できず、毒性を示すことはできません。このように抗体は、結合することによって微生物の感染力を低下させたり、毒素の毒性を減少させたりすることがあります。例えばインフルエンザウイルスは、ウイルス表面のヘマグルチニンを気道上皮細胞のシアル酸残基に結合させて細胞内に侵入するため、ヘマグルチニンに対する抗体はインフルエンザの感染力を低下させます。このことを「中和作用」といいます。

そして、がん細胞などの標的細胞には、増殖因子などの刺激で増殖するものがあります。そこで、標的細胞の増殖刺激を受けとめる受容体に抗体が先回りして結合することによって、標的細胞は刺激を受けることができなくなり、増殖できなくなります。

オプソニン作用

マクロファージ(※4)や好中球といった食細胞は、もともと細菌や死んだ細胞に結合する能力を持っています。こういった細菌や死細胞に抗体や補体が結合すると、食細胞がもつ補体受容体やFc受容体を介して結合して、食作用を促進する作用をおこします。このことを「オプソニン作用」といいます。

補体活性化機能

抗体は補体の古典経路によって補体を活性化し、抗体の結合した細菌に補体を結合させて細菌の細胞膜を破壊し、溶菌します。またオプソニン作用で食細胞による抗原の食作用を促進させます。IgG1、IgG3、IgMがもつ機能です。IgG2は補体活性化能は低く、IgG4、IgA、IgD、IgEはこの機能をもっていません。

ADCC活性

標的細胞上の抗原に結合した抗体に、さらにエフェクター細胞が結合します、そのエフェクター細胞によって標的細胞を攻撃する物質が放出され、撃退し、標的細胞が傷害されてしまいます。

細胞溶解(CDC活性)

標的細胞上の抗原に抗体が結合すると、補体(※5)と総称される複数の血清(※6)タンパク質が次々と反応して活性化されていきます。そうして、細胞の表面で一連の反応が起こり、細胞は破壊されていきます。

※4 マクロファージ:白血球の一つで、免疫システムの一翼を担う細胞です。生体内に侵入した病原体(細菌やウィルスなど)や死んだ細胞を捕食して、消化することによって処理します。また、捕食した病原体の表面にある抗原を他の細胞に知らせる役目(抗原提示能)もあります。

※5 補体:抗体が抗原と結合すると活性化します。そして、抗体の働きを補助したり、マクロファージによる貪食細胞による捕食促進作用や溶菌作用を示します。  

※6 血清:血液が固まった時に、上澄みとしてできる淡黄色の液体が血清です。血液から細胞成分(赤血球・白血球・血小板)を除いたものを血漿(けっしょう)といいます。血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれます。そして、フィブリノゲンと凝固因子を除いたものを血清といいます。